心もとなき
心もとなし(心許なし)は、「待ち遠しくて心がせかれる」という肯定的な意味と「不安で気持ちが落ち着かない」という否定的な意味の両方で使われる。ここでは、「長い旅路への期待と不安の入り混じった落ち着かない気持ち」と両方の意味に取っている。

白河の関・しらかわのせき
五世紀初頭に蝦夷への警護を目的に設けられた関所。奥州へ入口とされ、古くから多くの歌人が歌に詠んだ歌枕の地。

● 旅心定まりぬ・たびごころさだまるぬ
「心もとなき」に対応する言葉で、長い旅路への期待と不安の入り混じった落ち着かない気持ちが、陸奥への入口である白河の関にさしかかって、「さあ、ここからいよいよ奥州への旅に入るぞ」という旅の実感を新たにしたということ。

いかで都へ
平兼盛「便りあらばいかで都へ告げやらむけふ白河の関は越えぬと」拾遺和歌集

理なり・ことわりなり
もっともである。平兼盛の歌に同感の意を表す言葉。

三関・さんせき、さんかん
出羽国の念珠・ねずの関。陸奥国の白河の関。陸奥国の勿来・なこその関。以上が東国の三関とされていた。

風騒の人・ふうそうのひと
詩人、歌人。 風騒=詩文を作り楽しむこと。風流。風雅

心をとどむ
西行「白河の関屋を月のもるかげは人の心をとむるなりけり」によって書かれた文章。
古来多くの詩人、歌人が白河の関に来た感慨を歌にしていること(歌枕の地であるということ)をいう。

秋風を耳に残し
能因法師「都をば霞とともにたちしかど秋風ぞ吹く白河の関」後拾遺和歌集

紅葉を俤にして・もみじをおもかげにして
源頼政「都にはまだ青葉にて見しかども紅葉散りしく白河の関」千載集

白妙・しろたえ
真っ白、白さ 「卯の花の白妙に=卯の花の白さに=真っ白な卯の花に」

衣装を改めし・いしょうをあらためし
正装に着替えること

清輔の筆・きよすけのふで
藤原清輔「竹田大夫国行という者、陸奥に下向の時、白河の関過ぐる日は、殊に装束ひきつくろい向かうと云々」袋草子

とどめ置れしとぞ
書き留められているそうだ。「とぞ」は、伝聞あるいは不確実な内容であることを表す。

かざし
=挿頭 装飾のため冠にさす花、枝、造花