● 皇太子・ひつぎのみこ
大海人皇子・おおあまのみこ、後の天武天皇です。舒明天皇と皇極天皇の子として生まれ、天智天皇の同腹の弟です。天智天皇が即位した後に皇太子となり政務の面でも天智天皇をよく助けました。しかし、天智天皇は実子大友皇子が成長すると太政大臣に任じ大友皇子を重用するようになります。天智天皇は崩御の直前に大海人皇子を枕元に呼び後事を託したとされますが、大海人皇子は自らの意思で出家して吉野へ隠遁します。

天智天皇が亡くなった翌年大海人皇子は吉野で挙兵し、近江朝(大友皇子)との間で日本を二分して戦う壬申の乱が勃発します。壬申の乱に勝利た大海人皇子は、飛鳥浄御原宮で即位し天武天皇となります。即位後は讃良皇女・さがらのひめみこ(天智天皇の娘で後の持統天皇)を皇后に立て、大臣を置かず皇后と二人三脚で政治を行いました。

● 紫草の・むらさきの
「にほふ」にかかる枕詞。「紫草」は「むらさき」と読み、紫草の根から取った染料の色。

● にほへる
「にほふ」は香りだけでなく色にも使われました。紫色のにほへる=紫のイメージする高貴であでやかな。

● 妹・いも
男が女を親しんでいう語。主として妻・恋人を指します。

● 憎くあらば・にくくあらば
憎く思うのならば。私のもとを去り天智天皇の妻となったあなたを憎く思うのなら。

● 人妻ゆゑに・ひとづまゆえに
人妻であるあなたなのに。「人妻だから」ではない。

● 恋ひめやも・こいひめやも
「どうして恋せずにいられようか、いやいられない。」反語で激しい感情を表しています。