一頁

● 天平二年・てんぴょうにねん
西暦730年

● 師の老・そちのおきな
当時太宰府長官である太宰師であった大伴旅人

● 宅・いえ

● 萃まりて・あつまりて
集まって

● 申く・ひらく
開く

● 初春の令月・しょしゅんのれいげつ
初春の何をするにもよい月、めでたい月、令月は本来は陰暦二月の異称。帰田賦・文選巻十五では、正月十三日を初春の令月としているので「初春の何をするにもよい頃」と解釈する。「仲春令月、時和し気清らかなり」後漢・張衡・帰田賦

● 気淑く・きよく
大気はよく澄み渡り

● 風和ぎ・かぜやわらぎ
風は穏やかで

● 鏡前の粉・きょうぜんのこ
梅を鏡の前で白粉を塗って化粧する美人に譬えた表現

● 披き・ひらき
開き

● 蘭・らん
キク科のフジバカマ 別名蘭草 初春に芳香のある葉を出す。

● 珮後の香・はいごのこう
「珮」は奈良時代に礼服につり下げた玉製の装飾具。「おびだま」ともいう。「珮後」は珮の空間的後、つまり珮を身につけた貴人。その貴人から漂ってくる高貴な香りが「珮後の香」

● 薫す・かおらす
漂わす、くゆらす

● 加之・しかのみにあらず
それだけでなく

● 曙・あけぼの
夜明け

● 嶺・みね
山の頂

● 羅・うすもの
絹で織った薄物のベール ここでは雲のたとえ

● 蓋・きにがさ
貴人の後から差し掛けた絹または織物を張った柄の長いかさ

● 夕・ゆうべ
夕刻、夕方

● 岫・みね
山の窪地、洞穴、 雲は山の洞穴から湧き出ると考えられていた。

● 霧結び・きりむすび
霧がかかり

● うすもの
ここでは「薄霧」をいう

● 封めらえて・こめらえて
封じ込められて

● 故雁・こがん
昨年の秋に飛来した雁

二頁


● 蓋・きにがさ
ふた、屋根

● 座・しきい
座席、座る場所

● 膝を促け・ひざをちかづけ

● 觴を飛ばす・かづきをとばす
酒盃を交わす

● 言・こと
言葉

● 一室の裏・いっしつのうち
一室の中

● 衿・えり
着物のえり

● 煙霞の外に開く・えんかのそとにひらく
「煙霞」は「自然の景色」「煙霞の外に開く」は「外に向けて大きく開く」形式に縛られず胸襟を開いて打ち解けること。

● 淡然と・たんぜんと
物事にこたわらず、さっぱりとして

● 自ら放にし・みずからひしきままにし
自らの心を開放して、心のおもむくままに

● 快然と・かいぜんと
心地よく、快く

● 自ら足る・みずからたる
満ち足りる

● 若し・もし

● 翰苑・かんえん
文筆・文章

● 何を以ちてか・なにをもちてか
どのようにして

● 情を述べん・こころをのべん
心情を述べられようか、表現できようか・・・いやできはしない、という反語表現。

● 詩・し
中国の漢詩

● 落梅の篇・らくばいのへん
落梅の詩 「篇」はここでは「詩」をいう。

● 紀す・しるす
記録する、ここでは「落梅の篇を記す」で「落梅の詩がある」

● 古と今と・いにしえといまと
「古」は昔の中国の漢詩、「今」は今の日本の和歌

● 何ぞ異ならん・なにそことならん
「何が異なるだろう、いや何も異なりはしない」という反語表現

● 宜しく・よろしく
よろしく

● 賦して・ふして
「賦す」は、題を割り当てられて詩を作ること

● 聊かに・いささかに
少しばかり、いささか、ちょっとばかり

● 短詠・たんえい
短い詩歌、ここでは和歌

● 成すべし・なすべし
詠もうではないか