鬼 二頁

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二曲三体絵図には「砕動風」と「力動風」の二つの鬼に関する絵図が取り上げられています。


この砕動風は、形は鬼であるが、心は人間であるから、身体に力を入れず持たず立ち振る舞えば、動作は細かくくだけてくる。心身に(心にも身にも)力を入れないで、身を軽々と振る舞う所が、則ち砕動風の人体である。総じて、「働き」というものは、この砕動風を体根としており、老若、童男、狂女などを演じる場合にも、事によっては砕動風な心根があるものだ。『花鏡』に「身を強く動かす時には、足踏をゆるく踏み、足踏を強く踏む際には、身をゆるく動かせ」とある。これは、身動足踏の生曲の生れ出る本となるものである。
この「砕動風の鬼」が「怨霊・憑物などの鬼」と考えてよいと思います。


これ(力動風)は力を体として(力を体に込めて)働く風体であるから、しな(美しさ・幽玄さ)は欠けている。心も鬼であるために、いづれも(体も心も)厳の見風(強く恐ろしい見風)のもので、面白い粧ひ(趣)は少ない。しかし、数々の曲風を重ね、風体を尽して演じた最後に急風として(この力動風を)一見すれば、目を驚かし心を動かすだけの一興(面白さ)はあるものである。よって、再度(二度)演ずるようなことがあってはならない。よくよくこれを心得よ。
この「力動風の鬼」が「まことの冥途の鬼」と考えてよいと思います。
