老人 一頁

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老人の物まねは、この能(申楽)の道の奥義(奥深い大切な事柄)である。役者の芸の実力がすぐに観客にわかってしまうのが老人の物まねなので、これが最も難しいのである。
だいたい、能(申楽)をかなりの程度まで極めた役者であっても、老いた姿の演技は不十分な人が多い。
「女」の冒頭では「およそ、女がかり、若き為手のたしなみに似合う事なり」とありました。女性の姿(女らしさ)を表現するには、若い役者の持つ若さゆえの魅力(時分の花)が大いにふさわしい(役立つ)ということです。しかし老人の物まねにおいては、若い役者の若さゆえの魅力(時分の花)など邪魔になるだけでまったく通用しません。ただただ実力だけが頼りの難しい芸であり、長年稽古を積み重ねて高い芸力を持っていなければ、観客の目に適う老人の演技はできません。
