女 二頁

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つまり、装いを重視せよとは、姿を美しく見せよ(女らしさを表現せよ)ということである。どんな物まねであっても、装いが悪くてはよいはずはないが、とりわけ女性の姿をまねるには(女らしさを表現するには)、装いが最も大切である。
装いが最も大切ですが、女性の装いをするだけで女らしさがすぐに表現できるかと言えば、決してそうではありません。そこには様々な調査・研究・工夫が必要です。高貴な女性と世間一般の女性では、女らしさの表現に大きな違いがあります。申楽の役者が女御・更衣といった高貴な女性の姿を見ることはないのだから、高貴な女性の装いと振る舞いは、それをしっかり調査研究せねばなりません。曲舞、白拍子、物狂いなどの女性の場合には、そこに独特の表現の仕方があります。顔の保ち方、首の保ち方、着物の袖の長さ、帯の締め方・・・多方面の調査・研究・工夫が必要です。だから、初心の若い役者にはこれは大変難しいことなのです。
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「風姿花伝第二 物学条々」(物学条々・表紙)の投稿ページで、「二曲三体」についてふれましたが、「二曲三体事」第一条として取り上げた「至花道」を著した翌年の応永二十八年に、世阿弥は「二曲三体事」の詳細な説明を人形絵図で示しました。それが「二曲三体人形絵図」です。ここでは、老体・女体・軍体の三体に、絵図とともに標語を付して、各体をまねる(演じる)場合の心の使い方を説いています。


女体をまねるには(女らしさを表現するには)、「心を体にして、力を捨てる」つまり、心と体を一体とし(心で体をコントロールして)、無駄な力を捨てる(意識的に力を使おうとせず、自然な流れにまかせる)といった心遣い(配慮)が必要だ、このことをよくよく心得ておかねばならない。女体をまねること(女らしさを表現すること)の最も大切な点がここにある。女体をまねること(女らしさを表現すること)は、幽玄の根本ともいうべきものである。返す返す(くれぐれも)、「心を体にして、力を捨てる」を忘れてはならない。
風姿花伝の物学条々・「女」では、女性の姿をまねるには装いが最も大切であると、外面の女らしさを強調していました。それから二十年を経た二曲三人形図では、「体心捨力(心を体にして、力を捨てる)」を、女体の物まね(女らしさを表現すること)の最も大切な点としています。この頃の世阿弥は、女体の物まね(女らしさを表現すること)は幽玄の根本であると考え、外面的な装いだけでなく心の使い方を重視しました。
女性の心に成り切って女性の心で自分の体をコントロールする。意識して力を出そうとせず、演技の流れの中で自然にまかせて力を使う。そこに幽玄が現れ出るということのようです。
