物狂 一頁

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物狂(の演技)は、この能(申楽)の中でも最も面白さの限りを尽くした芸である。物狂は種類が多いので、この一分野を得意とするまで極めた達人は、あらゆる分野の物まねに深く通じるだろう。何度も繰り返して工夫と研究を重ねるべき芸事(稽古の対象)である。
たとえば、憑物の物狂いの数々では、神・仏・生霊・死霊のたたりであれば、その憑物の本体をまねれば、容易に演じられ、(うまく狂う)手がかりもあるだろう。
親に生き別れ、子供を捜し尋ね、夫に捨てられ、妻に先立たれる、このような悲嘆にくれる思いに狂乱する物狂は、極めて難しい。
かなり上手な役者でも、憑物の物狂か、悲嘆の物狂かを区別せずに、ただ一本調子に狂乱を演じるので、観客も感動しない。
「物狂」の条は、物学条々も中でも最も分量が多く、それだけ世阿弥が力を入れて執筆したことがうかがえます。能(申楽)の中でも最も面白さの限りを尽くした芸であると世阿弥が述べているだけに、観客の人気も高かったのだと思います。そして、物狂には様々な種類があり、それを稽古して極めれば、あらゆる分野の物まねに通達する(深くその道に達する)ことができます。役者連中が競ってそれを工夫・研究し、稽古に力を入れたのも無理からぬことです。物狂は大きく二つに分かれます。「憑物の物狂」と「悲嘆の物狂」です。この二つを区別せず、ただ一本調子に狂乱を演じても観客の感動は得られません。物狂はいかに観客の感動を引き出すかが成否の分かれ目です。よって工夫・研究と稽古の分かれ目もそこにあります。
憑物の物狂の代表的な演目は「卒都婆小町」です。
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悲嘆の物狂の代表的な演目は「百万」です。
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ショート解説 能「百万」宝生流 ← クリック又はタップ YouTube
