命をし幸くよけむと 〈卷七・一一四二〉詠人知らず
千年以上の時を経てこの万葉の歌から伝わってくる響きは、健康を願うのでもなく、長寿を祈るのでもない、ただ今この瞬間の命の無事を願う響きです。
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歌を深く味わってみます。
作者は不明です。
詞書に摂津(現在の大阪府の北部と兵庫県の南東部)で作ったとありますから、都から西国に向かう旅の途中に詠んだ歌なのかもしれません。大阪府吹田市垂水町に垂水神社があります。そこから湧き出る垂水の水を飲むと命が長らえ幸せになると言い伝えられています。旅の途中に垂水神社に立ち寄り、そのご神水を飲み健康と長寿を願って作った歌だったのかもしれません。
「健康と長寿がまっとうできますように。そう祈りながら岩間から流れ出る垂水神社のご神水を両手に受けて飲み干したことだ」
人間の体はその60%以上が水分です。人間にとって水は命そのものです。だから人は命の瀬戸際で水を欲します。
今、千年以上の時を経てこの万葉の歌から伝わってくる響きは、健康を願うのでもなく、長寿を祈るのでもない、ただ今この瞬間の命の無事を願う響きです。