学而第一 八章 「君子は重からざれば則ち」

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過ちは、すぐにそれを改めよ

● 君子は重からざれば則ち威あらず
君子は君主(為政者)の意味です。「重からざれば」とは、見た目の重々しい態度や風格だけではなく、内面の重々しさ、内面の充実を意味します。

● 学べば則ち固くなならず
「学ぶ」とは、本来頭を垂れて教えを請うことです。たとえ書物から学ぶ場合であっても、学ぶ(学問する)ことは、謙虚で素直な行動であるべきです。現代では学ぶことが競うことになってしまい、学び本来の姿から遠ざかってしまいました。人に勝つ為の学びが学ぶ者から謙虚さと素直さを奪っています。

● 忠信を主とし
「忠」は真心。「信」は信用。真心と信用を第一せよということです。「忠」は内なる心のまこと。「信」は発せられた言葉のまこと。

● 己れに如かざる者を友とすること無かれ
自分より劣る人物を友にするなという意味です。

● 過てば則ち改むるに憚かること勿かれ
間違っていたら、それを改めるのに遠慮するな。つまり、過ちとわかったら、すぐに(則ち)それを改めよということです。人は体面を気にしてなかなか自分の非を認めたがらないものです。ですから、これができる人こそまさに君子なのです。

儒教の古典、五経の一つである「易経」には、次の言葉があります。「善を見れば則ち遷り(=移り)、過ちあれば則ち改む」善い事を見聞きしたならばすぐに(則ち)それを実行に移し、過ちに気づいたならばすぐに(則ち)それを改めよ。ここでもポイントは「すぐに(則ち)です。すぐに改めない限り改まらないのが過ちであり、すぐに行わなければついに行われないのが善行です。


最後の「過てば則ち改むるに憚かること勿かれ」が上の四つにかかっていると解釈して読んでみます。

● 君子は重からざれば則ち威あらず 軽々しい態度や軽い口。それが過ちだと気づいたならすぐにそれを改めなさい。

● 学べば則ち固くなならず 人と競うための学び。それが過ちだと気づいたならすぐにそれを改めなさい。

● 忠信を主とし 真心と信用を軽んじる。それが過ちだと気づいたならすぐにそれを改めなさい。

● 己れに如かざる者を友とすること無かれ 自分より劣っているものを友とする。それが過ちだと気づいたならすぐにそれを改めなさい。

朝倉敏景の家訓より

戦国大名が子孫に残した家訓書として名高いものに「朝倉敏景十七箇条」があります。その十七箇条の家訓の中にこの章について書かれた個所があります。「世の中に聖人や賢人の語を学んでいるものも多いが、たといそれを学んでも、また、詩文を読んでみても、その人の心が偏屈であるならば、決して真の学習をしたとは言われまい。論語に『君子は重からざれば則ち威あらず』という語句のあるのを読んで、ただひとえに重々しいのがよいとばかり考えたのでは、これまた、妥当とはいいがたい。重かるべき、軽かるべきというのも、時宜に適い、場所に従っての振る舞いこそ最も肝要である。」桑田忠親著「武士の家訓書」講談社学術文庫P89

「素直な心で古典に接し、時によって、また所によって、その振る舞い変えられる柔軟な心(思考)を持て」朝倉敏景はこのように言っています。朝倉敏景は戦国時代に下克上の先駆けをした人物で、どちらかといえば悪人のイメージがつきまといます。しかし、混乱した世は柔軟な思考なくして渡りきることはできません。素直な心で古の聖人賢人の語を学ぼうという前向きな姿勢を持ち、しかも学んだ語をその時と場所に即して理解し実践した朝倉敏景は、やはり稀代の名将・名君だったと言えます。論語に限らず、これが古典を学ぶ姿勢というものなのでしょう。

過ちを改めて善にうつる徳を備えた人

日本資本主義の父・渋沢栄一は、明治維新の功臣・三条実美と木戸孝允を「自説に固執せず、よく人の説を聞き容れられた。これは過ちを改めて善にうつる徳を備えた人であると言える。」と評しています。

自説に固執して、人の意見に耳を傾けない人は、自分の過ちに気づけないということのようです。

不学則不固・学ばざれば則ち固ならず

「学則不固・学べば則ち固ならず」は、前の「不重則不威・重からざれば則ち威あらず」に対応すると考えれば、本来はじめに不の文字があったのではないかと考えられます。「不学則不固・学ばざれば則ち固ならず」(学問しなければ堅固な信念を持てない)

君子(ここでは君主の意味)たるもの、重々しい態度で威厳を備え、学問して堅固な信念を持てと言っているのです。その上で忠(真心)と信(信用・信頼)を第一に行動し。自分より劣る人物(忠と信のない人物、つまり自分に媚びへつらう輩)とは付き合うな。それでも過ちがあったなら、威厳や信念にとらわれず、プライドを捨て柔軟な態度で過ちを正せ。

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