秘儀に云はく 一頁

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秘伝の教え(申楽の源)
もともと芸能とは、世間の人の心をなごませて、貴賤・貧富の隔てなく、すべての人に感動を与えることである。これが人の幸福を増す基本、寿命を延ばす手段なのである。究極において芸能の道はすべて幸福を増し、寿命を延ばすためにある。とりわけ申楽は、芸の腕前を極めて名人として都で認められることを能役者としての最大の名誉としている。
「神儀に云はく」「神代に起こった申楽の源を思い出してください。「神代」に起こった申楽の源は「面白さ・楽しさ・めでたさ」でした。これは、ここでいう「幸福を増すこと・寿命をのばすこと」です。「幸福を増すこ・寿命をのばすこと」を「寿福増長」と一言で呼んでいます。「寿福増長」は、神代に起こった申楽の源から流れきたものです。
都の上根上智の眼と遠国・田舎の卑しき眼
けれども、ここで取り分け大事なポイントがある。天性の優れたレベルの鑑識眼(芸の良し悪しを見分ける眼力=芸の理解力)を持った都の高貴な観客が、最高レベルの芸の腕前を身につけた役者(あらゆる芸風を身につけ、そのすべてを極めた役者)の芸を観る場合には、観る観客のレベルと演じる役者のレベルが相応に釣り合っているので何の問題もない。しかし、遠国・田舎の大衆で低いレベルの鑑識眼(芸の理解力)しか持ち合わせていない連中には、この最高レベルの芸の腕前を身につけた役者の芸は理解できない。身分貧富に関わりなくすべての人に感動を与えるという芸能の観点からすれば、これをどうすればよいだろう。
元来、芸能とは貴賤・貧富を問わず、すべての人に感動を与えることを使命としているが、能役者が都で名人と認められるために高いレベルの芸を身につければ身につけるほど、遠国・田舎の大衆はその芸から離れていく。そこに大きな矛盾が生じる。このことを取り分け大事なポイントとして知っておけということです。
