去年見てし秋の月夜は照らせど〈巻二・二一一〉柿本人麻呂 反歌

年月は大切な人を失った悲しみを癒す唯一の薬ですが、その人を遠ざけていくという副作用を伴います。大切だった人の記憶も他の記憶の中に埋もれていくのです。

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<語句解説>

歌を深く味わってみます。

去年の秋、妻と一緒に見た月は、今夜も去年と変わらず照り輝いている。月はこれからも変わらず照り輝いているだろうが、ともに眺めた妻は年月とともに遠ざかっていく。

たとえどんなに大切だった人であろうと、年月は亡くなった人を遠ざけていきます。年月は大切な人を失った悲しみを癒す唯一の薬ですが、その人を遠ざけていくという副作用を伴います。大切だった人の記憶も他の記憶の中に埋もれていくのです。