春の苑紅にほふ桃の花〈巻十九・ 四一三九〉大伴家持
じっと観賞して愛でる美もあれば、その瞬間にだけ感じ取れる一瞬の美もあります。一瞬の美は、その時、その場所で、その人にしか感じ取ることができません。家持は、心のシャッターがとらえた一瞬の美を、歌にして永遠という名のフォルダに保存しました。
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歌を深く味わってみます。
大伴家持の歌です。
「三月の陽気に誘われるままに春の園に足を踏み入れた。春の園は桃の花が満開で、匂うがごとくに辺り一面を紅色に染めている。花に沿って下道がまっすぐに伸びていく。一瞬、少女が目に入る。花の色に照り輝く下道に立つ少女の姿は、天女が舞い降りたかと錯覚するような可憐な一瞬の美だった」
じっと観賞して愛でる美もあれば、その瞬間にだけ感じ取れる一瞬の美もあります。一瞬の美は、その時、その場所で、その人にしか感じ取ることができません。
家持は、心のシャッターがとらえた一瞬の美を、歌にして永遠という名のフォルダに保存しました。
通説ではこの歌は家持が越中に国司として赴任していた天平勝宝二年(750年・家持三十二歳の時)、妻が都から越中まで家持を訪ねてきた時に作られた歌とされています。をとめは妻を指すとするのです。ここではその通説には従わず、心が感じとったままの心象風景でこの歌を解釈しました。